■木曽御嶽山は古い時代から「霊山」としての信仰を集めた山だった。周辺の山のあちらこちらに御嶽山の「遙拝碑」があるという。旅人たちは畏敬の念を持って御嶽山の姿を眺めていたのだろう。 「暮雪」とは俳句の季語でみると「冬」である。 冬の夕暮れに見る雪景色のことを「ぼせつ」というのだが、「御嶽山の暮雪」といった場合は、初夏の薄紫の山肌に消え残る雪のことでもあるらしい。 この場合は「くれゆき」と発音されることもあるようだ。 歳三の詠んだ歌は初夏の残雪というよりも、悪天候のどんよりとした重い雲間から、わずかにのぞいた御嶽山のことを表現しているようだ。 季節も初夏というよりむしろ冬に近いものを感じる。 垂れ込めた嵐の雲は、ある意味歳三たちの旅の心の重さでもあるかのようだ。 道場としては無名の試衛館一派の彼等を評価する者はまだいない。彼等を支えているのは「武士となって国のために一身を捧げる」という夢と誇りだった。 その遠い夢が御嶽山の雪の白さと一瞬交錯する。 空は寒く、世間の風も冷たい、でも必ず還り来る春を信じて歩いていくしかなかった。 (2006 4/17)