伝馬町では、朝の雪の盛りを知ることはない
歳三は子供の頃、江戸に二度奉公に出されている。
一度目は十一歳の時で、上野の松坂屋呉服店で丁稚奉公したものの番頭といさかいを起こして帰ってきてしまった。
二度目は十七歳の時で、大伝馬町の呉服店(質屋との説もあり)に勤めたが、今度は女性関係の間違いで辞めている。
「人に動かされる」よりも「人を動かす」ことの方に才能があった歳三には奉公など長続きする道理もなかった。
伝馬町のような「都会」では、雪の積もった朝に、その白い世界の美しさを堪能する余裕などはなかったことだろう。
あっというまに踏み荒らされて、歳三にとって「大切な雪」の余韻も何もあったものではない。
純水無垢の雪景色を見ることがないなんて、伝馬町ってところは哀れだな…そんな気持も透けて見える。
(2006 3.29)
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