知れば迷い
しなければ迷わない
恋の道
大体こういう句を「あの土方歳三が」どんな顔をして書いていたのかと想像するだけで可笑しい。
司馬遼太郎の小説「燃えよ剣」で、歳三が「豊玉」として俳句をひねっているところに沖田総司が出くわし、さんざん冷やかしたり呆れたりする場面がある。
沖田でなくても「アララ…」とコメントに苦慮する作品のひとつがこれかもしれない(笑)
歳三自身も「どうもこれはいけないなあ」と思ったのか、この句の隣に同じような言葉を用いて、恋ではない別の句を詠んでいる。
紙に書いてしまったこの句は、塗りつぶしてしまうわけでもなく、むしろまわりをわざわざ囲ってあるのだ。
どうやら削除する部分が見えるように消す「見せ消(みせげち)」という手段らしいが、我々にはかえって「ここ重要!」とばかりに主張しているように見えてしまう。
新選組を作る前も作った後も、歳三は「恋多き男」でもあった。人生の一大事の決意に迷いが出るような時期もあったのだろう。もしも歳三が恋を選んでいたら、幕末史はずいぶん違った印象だったかもしれない。
(2006 3.16)
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