春雨だね
客人を返して
自分が客になりに出かけていく
実は「豊玉発句集」には、「春雨三部作」とでも呼びたいような、味わい深い名句も存在している。
この「客を返して客に行く」などのフレーズなどは小林一茶が詠んでいたとしてもおかしくないような気がする。
淡い雨の降る春の宵、客人を送っていった歳三が、まっすぐ帰宅する気分になれなくて、そのまま自分が今度は客としてどこかを訪ねようとしているようだ。
おそらく先客との堅苦しい話を済ませ、ようやくこれから羽を伸ばすことのできる場所でも訪れようと言うのだろう。それは友人宅だろうか、それとも恋人宅だろうか。
穏やかな「春雨」に包まれた、こんなにも優しい時間が歳三にもあったのだ。殺伐とした毎日ばかりではなかったのだなと、ほっとさせてもらえる一句だ。
(2006 3.11)
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