仕事に出かけていく道で
春の月を見た
春の夜、出来るならば「公用」などではなく、どこか別のところに「むつかしからぬはなし」をしに行きたかったのかもしれない青春真っ盛りの歳三がそこにいる。
「公用」とあるが、この句が詠まれたのは上洛前のことであるから、新選組としての「隊務」ではありえない。
しかしそんな未来を予言しているようにすら思えてしまう一句だ。
「月」も歳三の俳句に梅、雪とならんでよく出てきている。
古くから、芸術の素材に「雪月花」はつきものだからと言ってしまえばそれまでだが、それだけ多くの人の心を捉えるのもまた「雪月花」であるともいえよう。
まして激動の幕末を駆け抜けた「剣客」であった歳三が、その伝えられる人物像からは想像もつかない「雪月花」に心情を寄せて俳句を書き残しているという事実に、とても興味を覚える。
たとえその句が専門家から見ればどんなに「月並み」であったとしてもである。
(2006.3.5) |