大切な雪が
融けてしまった
松の庭
これもやはり雪が大好きな歳三ならではの一句。
珍しく庭に沢山積もった雪が、だんだん消えていくのが残念でならないらしい。
子供の頃、庭の隅の日陰に、何日たっても溶け残っている雪の塊を見て、なぜか応援したくなったことを思い出させる。
すっかり感情移入して、家に帰るとまずその雪の無事を確かめに行ったりしたものだった。
歳三の言う「大切な雪」も、なんとなく同じような気持を感じる。
雪が降るのを喜ばなくなる頃から子供とは言えないのかもしれない。そういう意味では歳三の中にはいつまでも少年のような思いがあったのだろう。
溶けずに頑張っているひとかけらの雪を「大事な自分の雪だ」と決めて、毎日みつめていたに違いない。
後年、冷徹な鬼副長と言われている歳三だが、ひとりの人間としての感性は、少年のままの純粋さを漂わせていた人なのだ。
(2006.3.5) |