梅の咲いている様子が寒そうには見えない。 確かに草木というのは、暑くても寒くてもじっとその場を動けずに入るのだから、暑かろうな、寒かろうなと思いたくなる。 春まだ浅く、人間の歳三にしてみたら、そこにそうして立っていろ、と言われたら寒くてかなわないなあ、とふと考えたのだ。 身を切られるような冷えた空気の中に、凛として佇んでいる梅なのに、少しも寒さを感じていないような「咲きぶり」だと感心している。 春のともし火のようにぽつりぽつりと開いた花に、心を重ねようと試みていた歳三の姿に、温かな懐かしさを憶える。 (2006 3.30)